【イベントレポ】休暇とキャリアブレイクがつくる”人を大切にして続く組織”
2025年11月06日

みなさん、こんにちは。キャリアブレイク研究所のあさです。
先日、人事図書館で開かれたイベントに参加しました。 タイトルは「実例から学ぶ!休暇とキャリアブレイクがつくる”人を大切にして続く組織”~経営・人事がこれから向き合う働き方のデザイン~」。
“休むこと”について、こんなに真剣に考える機会はなかったかもしれません。
登壇されたのは、 『フランスはどう少子化を克服したか(新潮新書)』『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方(KADOKAWA)』の著書、ライターの髙崎順子さんと、 キャリアブレイク研究所の北野さん。
どちらの話にも「働く」と「生きる」を見つめ直すような言葉がたくさんありました。
「暮らしにくいけど、生きやすい」国
まず髙崎さんがお話しされたのは、25年前に移住したフランスのことでした。
「フランスは暮らしにくいけど、生きやすい」
——この言葉がとても印象的でした。
“暮らしにくい”というのは、特にソフト面でのお話です。 多様性がありすぎて、なかなか話が伝わらない。 意見がぶつかることもしょっちゅう。
でも、そのぶつかり合いの根っこには、「みんな違っていていいよね」という前提がある。 そこが、フランスという国の「生きやすさ」だと髙崎さんはおっしゃっていました。
常識なんて、人によって違う。 だからこそ、誰も“普通”を押しつけない。 必要なときはきちんと対話をして、お互いを理解し合おうとする。
そういう文化が根づいている社会だからこそ、不便さはあっても、人としての「息のしやすさ」があるのかもしれません。
フランスの休暇は、“文化”ではなく“政策”
フランスでは、年間で最低5週間(約30営業日)の有給休暇が法律で定められています。 会社が休暇を取らせないと、罰せられる。
「休みは権利」という考えが徹底していて、みんなが本気で休むのだそうです。 そのために、業務の属人化をなくし、仕事を細かく分解して誰でも引き継げるようにしているのだとか。
会議にもルールがあり、人数・アジェンダ・目的を事前に明確にする。 “とりあえず集まる”ではなく、“必要な人だけが集まる”。そんなふうにして、休むことが前提の仕組みをつくっているのだといいます。
「休むには、仕事を整理しなければならない」
この一言がとても印象的でした。 休むために、みんな必死で生産性を上げた。 だから、フランス人は一見あまり働いていないように見えても、実際の生産性ランキングでは日本よりずっと上なのだそうです。
フランスでは、休暇は「休息」ではなく、「自由・想像力・社会的責任・連帯」の時間だと考えられています。
そして、「自由」という言葉の意味も、日本人のイメージとはまるで違います。 日本では「自由」というと、どこか“好き勝手にやる”ような印象がありますが、フランスでは「自分で決めて、責任を取ること」。
それは厳しさを伴うけれど、同時にとても自立した自由。 その考え方を聞きながら、ふと思いました。
日本でも、「自由」の概念が少しだけフランス寄りになったら—— もっと休みやすい風土が生まれるのかもしれないな、と。
「キャリアブレイクは経営改革だ」
北野さんの話は、日本の現状への問題提起と、キャリアブレイクという新しい視点からの改善提案がとても斬新でした。
「キャリアブレイクは、回復ではなく再構築の時間です」
キャリアブレイクとは、ただ休むことではなく、“過去・現在・未来を見つめ直す時間”のこと。 過去の意味づけを見直し、いまの役割を再構築し、これから何を大切にして生きたいかを考える時間。
北野さんは、その背景にある日本社会の構造的な問題を「文化中毒」と表現していました。
一つの組織や文化の中に長くいることで、その価値観に染まり、視野が狭くなり、やがて疲弊感や閉塞感を生む——。 それがいま、多くの人が感じている息苦しさの正体なのかもしれません。
「文化中毒は経済損失です。だからキャリアブレイクは経営改革なんです」
北野さんのこの言葉は、個人的に目からうろこでした。
休むことは“個人の回復”のためだと思っていたけれど、実はそれが“組織を整えるための時間”でもある。 「休むこと=非生産的」と思い込んでいた自分の中の常識が、スッと塗り替えられていくような感覚がありました。
視点を変えるだけで、同じ“休む”という行為がこんなにも意味を変える——。 これからの働き方を考えるうえで、この気づきはとても大きかったです。
休むことは、再構築すること
セミナーの後半では、グループで感想をシェアする時間がありました。 その中で出た問いが、今でも心に残っています。
「なぜ日本人は休めないのか?」
会場の誰かが答えました。 「小中学校の“皆勤賞”の影響じゃないですかね」
——たしかに。と思いました。
目的よりも「行くこと」そのものが評価される文化。 「やった人がえらい」と刷り込まれた私たちは、“やらない勇気”を持つことが苦手なのかもしれません。
日本は「やったほうがいいことをやる」のは得意。 でも、「やらなくていいことをやらない」のは苦手。
その小さな違いが、いつの間にか生産性が低いのに「休めない社会」をつくってきたのかもしれません。
だからこそ今、キャリアブレイクで再構築する時間が私たちには必要。
そして、再構築の時間を取ることを前提に設計された、人を大切にする組織こそが、これからの時代は生き残る。 そんな時代にもう突入しているのかもしれないと感じた、イベントでした。