【後編|レポート】申込数230名!キャリアブレイクが働く人や企業にもたらすもの
2025年04月09日

こんにちは。キャリアブレイク研究所のあさです。
3月18日、労務行政研究所が主催するセミナー「HRイブニングセッション」に、当研究所代表の北野が登壇しました!
前編では、日本の雇用制度の問題点やキャリアブレイクの効果についてお伝えしました。後編では、北野の「キャリアブレイクをどう社会実装していくか」についてレポートします。
▶【前編】はこちら
キャリアブレイクの価値とは
キャリアブレイクは「存在価値の復興」
北野はキャリアブレイク経験者との対話を通して、その価値は「ただ休む」以上のものであると実感しています。 例えば、激務で限界を迎えた社員が、休職を経て心身をリセットしたり、キャリアブレイク後に視座が高くなることもあるそうです。
実際に、とある企業では、管理職昇進前に3ヶ月間のキャリアブレイクを必須とする制度を導入しています。
「人材ロス」を最小限にする視点
キャリアブレイクは、離職を防ぐ有効な手段にもなるかもしれません。 たとえば、退職寸前だった社員がキャリアブレイクを経て復職したり、業務にマンネリを感じていた社員が再び活力を取り戻すこともあります。
「働き続ける」か「辞める」か、という二択だけでなく、「一度立ち止まる」という“第三の選択肢”があることで、企業と従業員の関係をより健全に保つことができます。 なぜなら、立ち止まる時間は「自分の存在価値を見つめ直す」機会となり、再び前向きに仕事へ向かうきっかけにもなるからです。
「キャリアブレイクは人材ロスの総量を最小限にしてくれる」 (飲料メーカー部長)
このように、一見人材ロスにつながりそうなキャリアブレイクが、むしろ社員の定着やエンゲージメント向上に寄与するという見方も広がっています。
「文化」の育て方
制度だけでは広がらない
多くの企業にはキャリアブレイクに関わる制度がありますが、実際はあまり広がっていないことが多いそうです。その背景には、制度が文化として根付いていないという問題があります。
・有給休暇(1~10日)
・中長期休暇(1~2週間)
・休業・休職(1~12ヶ月)
・離職・出戻り制度(1~5年)
商品の流行も文化の普及もプロセスは同じ
文化を広げるプロセスは商品プロモーションに似ています。新しい文化が広まるには、最初に2.5%の“イノベーター”が体験し、次第に広まっていくというプロセスをたどるからです。
文化醸成のプロセス
文化を根付かせるには新しいことをするのではなく、「火種」を見つけて育てていくプロセスが重要です。
1. STEP1: 火種を見つける(input) └ 1day研修などで、イノベーター(経験者)を発見する
2. STEP2: 火種を広げる(spread) └ 社内アンケートや広報で、イノベーターの声を組織全体に届ける
3. STEP3: 火種を育てる(movement) └ 定期イベントや制度利用の促進を通して、文化として定着させる
キャリアブレイク文化を育てる上でのポイント
その中でも特に「火種」の扱い方には注意が必要です。意図的にコントロールしながら広げることが成功のカギとなるのです。
《火種の取り扱い:2つの注意点》
1. どんなキャリアブレイクを良しとするか明確に └ 会社としてのメッセージを明確にする
2. 残される人に配慮する └ 配慮しながら制度設計・運用を行う
取り組み事例
キャリアブレイク研究所では、「伴走型」のアプローチで文化醸成を支援しており、過去には以下のような事例があります。
・某自治体: 業務過多による休職予備軍の増加 └ 休職経験者との対談で信頼関係向上
・某大学: 若手の離職傾向 └ キャリア成長の事例共有で心理的安全性が向上
・某大手企業: モチベーション低下 └ 企業内大学立ち上げで仕事のやる気を引き出す
企業がキャリアブレイクを必要とする理由
不安と惰性が企業を覆う
キャリアへの不安はSNSでよく見られますが、上司との面談で本音を語れない社員が多いのも事実です。やる気がある社員ほど、キャリア不安に敏感で、不安が深まると、最終的に「退職」という選択をすることもあります。
一方で、退職に踏み切れず、惰性で働き続ける社員もいます。この状態が「静かな退職」であり、現在多くの職場で問題となっています。
不安や惰性で働き続けることで壊れる職場
やる気のある社員から先に離職していく一方で、残された職場には静かな退職状態の社員が増加します。 すると、職場全体に閉塞感が漂い、活気や創造性が失われます。最終的には、企業の生産性や成長力の低下につながってしまうのです。
さらに深刻なのは、惰性で働き続ける中で、心身の健康を損なう社員が出てくることです。こうした社員は、やがてバーンアウトし、「休職」というかたちで職場を離れることになります。
間接的離職というリスク
「退職」は分かりやすい離職ですが、実は“静かな退職”や“休職”も、組織にとって同様にリスクの高い状態です。表面的には定着しているように見えても、実質的にはすでに「離職」と同じ問題が進行している場合があります。
・退職:不安の末に職場を離れる → 離職
・静かな退職:業務はするが意欲なし → 定着?
・休職:心身の不調で職場を離れる → 定着?
悪循環を断ち切る!「キャリアブレイク」
こうした悪循環を断ち切る為には、「キャリアブレイク」がヒントになるのではないでしょうか。
キャリアブレイクとは、仕事から一時的に離れ、自身の価値観や人生の優先順位を見つめ直すための期間です。
不安や惰性を抱えて働き続けていた社員に対して、心身のリセットだけでなく、「なぜ自分は働くのか」「どんな未来をつくりたいのか」という本質的な問いに向き合う機会を提供することができます。
それにより、社員は「自分の存在価値」や「仕事の意義」を再認識し、自らの意志で次の一歩を選べるようになります。キャリアブレイクを経て職場に戻った社員は、以前よりも意欲的に、自律的に働く傾向があるという研究結果も示されています。
こんなときこそ「キャリアブレイク」を検討してみては?
北野はこう話します。
「企業のみなさんは、すでにさまざまな人事施策を実施されていると思います。基本的には、今ある取り組みで十分だと僕も思っています。無理にキャリアブレイクを導入しなくてもいいんです。」
それでも、現場や人事の方からは、こんな声が聞こえてくることもあるそうです。
これまでの“足し算”の施策に手ごたえを感じにくくなっているなら、視点を変えて**“引き算”の施策、つまり『キャリアブレイク』**を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか?
”足し算”の取り組みを増やすだけではなく、一度立ち止まるという”引き算”の選択肢も。そんな柔軟な発想が、行き詰まりを打破するヒントになるかもしれません。
キャリアブレイクは、企業にとってどんな意義があるのか?
働き手不足が深刻化する未来に向けて、企業が持続的に成長していくためには、従業員の「この会社に貢献したい」をどうつくるかが鍵になります。
たとえば、2040年には約1100万人の労働力が不足すると予測されています(リクルートワークス研究所)。この構造的な人手不足の中で、今いる人材に長く健康的に働き続けてもらうことは、企業にとっても死活問題になりつつあります。
一方で、日本のエンゲージメント(仕事への熱意)は国際比較でも最下位レベル。日々のストレスは高く、離職リスクやメンタル不調も見逃せません。
従業員が自分の人生や働き方を立ち止まって見直す時間をもち、メンタルの回復や新たな価値観との出会いを経て組織に戻ってくる——これはライフキャリアを尊重する姿勢であり、信頼や帰属意識の向上にもつながります。
さらに、その過程で得た多様な視点や経験は、企業にとってもイノベーションや新たな価値創出のきっかけとなる可能性があります。「キャリアブレイク」を企業施策として直接導入するかどうかに関わらず、研究を通じて明らかになったその効果や背景を正しく捉え、従業員体験を重視した包括的なウェルビーイング経営を実現していくことが、今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。